【山の不思議話】山の主
第六感
ワンパクは山に隠るときには、基本的に一人です
しかし山の中では色々な危険があるので、一人で行動する場合は五感を研ぎ澄まし行動しないと、重大な事故やケガを招く恐れがあります
ヒグマなどの大型の獣につけられていないか耳をすまし匂いを感じたり、急な天気の変化がないか気を傾け気圧の変化を感じたり…
五感を研ぎ澄ました状態が長く続くと第六感のような力が目覚めてくるのを実感します
そして、山には『主』のような存在がいることに気付きます
ワンパクに信仰はないのですが、それが『神』なのか何なのかはわかりませんが、そんな存在を感じたり、ときには姿を現したりします
もちろん全ての山や森にあることではなく、『生きている山』や『生きている森』に感じます
表現しづらいのですが、『生きている』というのは、『生気』というか、心霊現象とはまた違う『何か違うチカラ』『神聖なチカラ』のようなものを感じるのです
その山の『生気』は、実りの秋にピークを迎えますが、その時期に山に入るとその『生気』にあたるというか、酔ってしまい、具合が悪くなることが多々あります
『生気』がたくさんある山では、その山と、そうでないところの境界線の空間が、蜃気楼のように歪んで見えることもあります
山の主に遭遇
2016年 夏
すっかり夜も遅くなった妻とのドライブの帰り道、もう少しだけ遠回りをして帰ろうということになり、ワンパクがいつも隠っている原生林を通る道路を快適に運転していました
しばらく森の中を進み、カーブを曲がると『あぶないっ!!』
道路に鹿が跳びだしてきました!
この地域ではよくあることです
ワンパクは急ブレーキをかけ、ハンドルを切ります
『んんっ!?』
『えっ?』
それは鹿ではありませんでした!
鹿の体に熊のような頭が付いていて、全身真っ黒な長めの毛で覆われていました
『新種の動物!?』
最初はそう思いました
しかし、その生き物をよく見ると様子がおかしいのです
宙に浮いているのです
鹿のような体をしているので、蹄行性特有の走り方なのですが、地面の20センチほど上に浮きながら駆けていました!
しかし、足が非常に遅い!
その生き物は慌てて逃げようと必死で足を駆けるのですが、足が空を切り、進んでいません
たくさん駆けているのに5メートル進むのがやっとな感じです
その生き物が車の前を横切り、道路の反対車線の向こう側の森に姿を消すまで、10秒ほどかかったでしょうか
ワンパク『いまのなに?』
妻『浮いてたね』
ワンパク『主(ぬし)?』
妻『そうかも』
ワンパク『ドライブレコーダー付けようね』
妻『そうだね』
いままで『主(ぬし)』のような存在には何度か会ったことはあるですが、その山や森によって姿形が違うようです
しかし、このときはワンパク一人だけでなく、妻も目撃しました
なにか起こりそうな予感…
実はこの後、この森で、ある存在と運命的な出会いをすることになります
それはまた今度…