【山の不思議話】霊山
2018年 夏の道南
おしゃれキャンパーのハニ天さんに『ワンパクさんから『山の主』の話とか不思議話を聞いて信じていましたけど、文字にするとなんだかウソくさいっすね☆』と爽やかにひでぇことを言われましたが、懲りずに不思議話をアップします
最初にお伝えしておきますが、場所や地域等が特定されないよう、この話の画像は実際の場所のものではありません
ワンパクは少なくとも毎年2回は、オオクワガタ・ヒメオオクワガタの採集や墓参りのために700㎞先の道南に行きます
話は逸れますが、それにしても北海道って広いですねぇ
700㎞進んでもまだ県外に出られないんですよ?!
東京~京都間とほぼ同じ距離ですよ?!
ワンパクは学生時代に東京で運転免許を取得しましたが、『東京では車は平均して一時間に9㎞しか進みません』と教えられました
それって車の意味ねぇじゃん!
北海道なら道東を朝早くに出発したら、夕方に道南に到着って感じですかねぇ
昨年の7月に夏期休暇を取得して、道南にヒメオオクワガタの採集に行きました
このときは採集場所の新規開拓をするべく、普通なら行かないような実績も情報もない山に狙いを定め入林しました
風林火山
オオクワガタと違い、ヒメオオクワガタはヒグマが出没するような山奥の林道などを昼間にルッキング採集します
もちろんヒグマの危険はいつもつきまといます
しかし、この山はヒグマとはまた違う、何か怖い感じがしていました
少し気味が悪いです
子供の頃に、なんとなく『行ってはならない場所』『入ってはならない場所』というのは感覚的にわかっていて、その感覚を振り切り、そこに行くと大怪我をしてしまったり大事故につながったりしてしまうことってみなさんはありませんでしたか?
それと同じ感覚でした
それでもこの日は身重の妻を車に残し、林道からさらに分け入った道を歩いて進んで行きました
一人でいるのですから、誰に気を遣うこともなく屁をこきながら歩いていると
『あぁっ!!』
ワンパクのお尻から御大将が出てしまったようです
しかも全軍出陣です!!
先鋒隊だけで止まるよう試みたのですが、オナラという余勢を借り、勢いのついた軍勢は怒濤の如く出陣していき、こちらの制止を振り切り、留まることなくワンパクパンツに相まみえることとなりました
しかし、このような突然の遭遇戦にもワンパクは狼狽(うろた)えません
ワンパクはこのような状況は相当場数を踏んでいます
そう!ワンパクは百戦錬磨!!
冷静に状況を把握し、かつ迅速に妻のいる車に向かいます
疾きこと風の如く徐かなること林の如く侵掠すること火の如く動かざること山の如し
風の如く迅速に車に着いたワンパクは、冷静に一連の事象を報告します
当然、妻からは叱責をくらうわけですが、それをワンパクは林の如く静かに黙って受け入れます
男は黙ってダンディズム
妻からウェットティッシュをもらい、パンツを脱ぐと御大将の豊かな香りが車中を一気に包み込み、後部座席の犬たちが吠え出します
侵掠すること火の如く
そのまま外に出て、屈んだまま後処理を行います
男の哀愁が背中からにじみ出ていたはずです
動かざること山の如し
浜崎あゆみの『A』
ワンパクパンツから大将がこぼれ落ちなかったことにホッとし、お尻を拭いていると、なんだか後ろが気になります
振り向いてみると草むらの中に何かあります
高さ50センチほどのピンクの人工物で、浜崎あゆみの『A』をかたどったロゴマークのようなものがありました
そのベニヤ板のような木で出来たロゴマーク『A』より先は、ちょっとした崖になっているので、ガードレール的な物なのでしょう
パンツも気持ちも新たにヒメオオクワガタ採集に戻ります
ヤナギやヤマブドウの木、イタドリを一本一本丹念に見て行きます
食痕があれば、いまそこにヒメオオクワガタがいなくてももう捕れたも同然です
またその木に採餌のために来るのですから
しかし中々痕跡すら見つかりません
ワンパクはどんどん山の奥深くに入って行きます
当然のようにヒグマの糞やマーキングの跡、足跡があります
崖から落ちないように先ほどのガードレールもずっと崖の縁に設置されています
標高が上がるにつれ、いつの間にかガードレールの外側の崖の下がかなり深いものになっていました
『こんなベニヤ板で出来たガードレールなんて役に立たないよなぁ』
崖の下を覗き込みながらガードレールに手をかけ、グラグラしないか確かめる
崖から落ちないように設置されているにしては心許ない材質
山の上に上がるにつれ、どんどん増えていくピンクのガードレール
『あ、これガードレールじゃない』
ワンパクは気付いてしまいました
いままでのこのピンクのガードレールが設置されていた場所を頭の中で振り返りながら、点を線で結んでいきます
この山の“ある一部”を囲うようにピンクのガードレールが設置されていることに気付きました!
そしてこの数!
『結界…』
そう、このピンクはすべてガードレールではなく、鳥居だったんです
山に入ったときのあの気味の悪さ
直感は的中しました
立つ鳥後を濁さず
入ってはいけない場所に来てしまいました
そしてなにより、ここが神聖な場所(?)であるにも関わらず、先ほどのワンパクパンツや御大将などをこの山に放置していこうとするこの不届き者に天誅が下るのではないかという不安…
ワンパクは自分のした愚かな行為を自ら戒めながら下山し、この山に対して許しを乞います
『ウンコは持って帰りますので許してください…許してください…』
すると…
山の上から凄い音を立てて何かが下りてきます
どんどん近づいてきます
ズゴゴゴゴ…
『え?何?速攻で天誅!?』
どんどんどんどん近づいてきます
『岩が転がってきてる系!?』
『でかいモンスターが追ってきてる系!?』
ズゴゴゴゴブゥーン…
『車かよ!』
林道の砂利道を猛スピードで駆け下りてくる古いハイラックス
この山にワンパクの他にまだ人がいるなんて思ってもみませんでした
運転手は怪訝そうにワンパクを見て
『よそ者のくる所じゃねぇぞ!!』と一喝
そもそもここは国有林なので、当然そんなことを言われる筋合いもなく、ジャイアン級の道理を勢いだけで押し通そうとする教養のない人は無視するに限ります
『聞いてんのかコラ!!』
語尾の『コラ』とは一体なんなんでしょう
『聞いてんのか?』
反応が欲しい淋しがり屋さんですね
しかもなぜか次は少し優しい口調
ワンパクが『クワガタ…』
と答えると
『はぁ!?クワガタ!?いねぇいねぇ!!さっさと山から出れや!』
ワンパクはこんなことくらいでは怒ったり、物理的手段に出たりはしませんが、とりあえずワンパクウンコ&パンツをこの山に置いていくことを決定!
そのことに伴う天誅や罰のたぐいは、全てこの男に降り注ぐよう祈りました
結界の中の主
下山し、一般道をもう少し山深くに15㎞ほど進むと、先程の山の入り口の裏側に出ました
そこには数軒の家で出来た小さな集落がありました
こちら側が山の正面になるようで、山の入り口には何か書かれた看板が立てられています
また、入り口の奥にも注意喚起の看板などが設置されています
どうやらこの小さな集落の人たちの信仰の対象となっている山らしく、入山に際して『女人禁制』などいくつかの禁忌が書かれています
『この山でウンコをするべからず』とは書いていないのでセーフですね☆
場所や地域などが特定されないよう、画像は控えます
詳しくはお伝えできませんが、この山に住む【でかい何らかの動物】が御神体であり、信仰の対象となっているようです
山の入り口から車に戻ろうとしたときに、先程のハイラックスが集落の一つの家に駐まっていることに気付きました
そして先程の運転手が集落の人達に話をして、こちらを指さしています
ジャイアンのくせに告げ口したようです
何かあるかなと思い、少し待っていましたが、集落の人もなにも言ってこないので、その場を離れることにしました
なんだか少しだけイヤな気持ちになりましたが、今回で学んだことは、『山に入る前の直感を信じることと、霊山のような信仰の対象となっている場所もあるので、フィールドワークする場所の下調べをよくしておくこと』
本州には信仰の対象がオオカミだったり、地域によって様々な独自の信仰があるのですが、歴史の浅い北海道にもこのような信仰があるんだなととても驚いた一件でした