サヨナラ相棒 トヨタウィッシュ【雑記】
ボクは収集癖があるくせに『モノ』に対してあまり執着を持たない
というか慈しみがないと言ったほうが正確かもしれない
とくに粗末に扱うこともないのだが、愛着のあるモノでもすぐに手離したり、平気で失くしたりする
たとえば、もう10年以上サバイバルで使用しているこの大刀【ジャングルマチェーテ】だって、いまだに値札シールが貼られたままの扱いだし、メンテナンスもかなり雑
なんなら刃物として重心のバランスがおかしいとすら思っている
大量生産品の安物だからそんな扱いだというわけでもなく、限定生産品や特注品などもボクにとってはこのジャングルマチェーテと同じ扱いだ
どうも、『モノ』など形あるものはいつかは無くなるんだろ的にしか考えられないサバイバル愛好家のワンパクですぅ
貸してたモノが壊れて返ってきても腹を立てたりしないのは、心が広いからじゃなく「いつかは壊れるからねぇ、そんなもんだ仕方ない」としか思わないだけ
でも今回、手離すにあたってワンパクの心がゆさぶられたモノがありました
サバイバルには直接関係なくて、自分への備忘録的な感じなので、飛ばしちゃってもいいYO!
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それじゃあ、早速いってみよー☆
義父から預かったモノ
ワンパクは東京や札幌といった大都市に住んでいたため、地下鉄などの公共交通機関が充実していたこともあり、車は自分にとっては特に必要がなかった
まぁ、金がかかるいわゆる『贅沢品』
仕事で使う車は会社にあるし、車を買っても土日しか乗らないだろうという事で、必要なときはレンタカーを借りたりすればそれで充分だった
ワンパクが道東へ移り住むことになって、その『贅沢品』は『生活必需品』と変わり、車の購入を検討していた矢先、義父が脳梗塞で倒れた
一命は取り止めたが、半身が不随となる後遺症が残ったため、義父は『どうせ自分は運転できないから、この車を使いなさい』と言ってくれた
しかし、ワンパクは義父の後遺症が回復してほしい想いを込め『預かります』と答えた
また大好きなドライブや温泉めぐりを義父の手で運転してほしかった
この車をワンパクが貰ってしまったら、義父に「もうあなたの半身は回復しないんだよ」と言っているような気がしたからだ
義父の後遺症が回復したら車を返す
その約束を果たせぬまま、リハビリの甲斐なく義父は一年後に静かに息を引きとった
家族が離れて暮らすということ
所有者不在のまま5年が過ぎ、預かったときの走行距離は50,000km程度だったが、もう220,000kmに達しようとしている
それでもまだ車自体に不具合などはなく、燃費も良いのでそのまま乗ることもできたのだろうが、いつ車の寿命が尽きてもおかしくなく、生活必需品である車が突然なくなってしまうリスクを考えると、いまこの車を降りることを決意するしかなかった
5年で170,000kmなので一年で約34,000km平均
土日しか乗らないのに…
預かってる割にタフに乗り過ぎだろとツッコミが入るかもしれないが、妻には離れて暮らす両親になるべく会えるうちにたくさん会ってほしいとワンパクは思っていた
だから妻の実家がある往復約1,000kmにもなる札幌市へも、ことあるごとに足を運んだ
なるべく両親に会わせたかった
この想いはワンパクが早くに兄を亡くしていることに起因する
兄はとびきり優秀だったため、地元の中学を卒業後に札幌の進学校に行き、医療職に就いてからは離島などの僻地医療に従事していた
姉もヤンキーだったくせに成績はとびきり優秀だったので、やはり中学卒業後に地元を離れて進学校へ進んだ
当時は家族が離れて暮らすことになんら違和感もなく、家を出ていくのが当然と思っていたのだが、突然の兄の死でその価値観が崩れ去った
『生』の延長線の終点に『死』があるのではなく、誰もが『生』の延長線上に点在する『死』をかわしながら生き抜いているのだと知らしめられた
兄はその点在する『死』を拾ってしまった
自分の人生のうち、離れて暮らす肉親や兄弟と何度会えるのだろう
そう考えると、妻が両親と離れて暮らす境遇は放っておけなかったのだ
車のメーターはその想いと比例するように数字を重ねていった
トヨタ ウィッシュ
この車で行った場所や思い出は数え切れない
義父が存命中に車椅子のまま入浴できる温泉にも連れて行けた
野犬を保護したときもこの車で我が家に迎え入れた
犬たちのために車内に設置したオリは、車の外から見たときの様からワンパクのウィッシュは『護送車』と同僚に名づけられた
仕事に忙殺されながらも不妊治療のため札幌に何度も何度も必死に通った
娘が無事に産まれて退院したときも、ワンパク母が買ってくれた恥ずかしくなるくらいダサすぎる服を着せて、この車で家に連れてきた
普段では会話にできないようなこともこの車に乗ってドライブしながら、愚痴ったり夫婦ゲンカしたり笑ったりした
フェリーに乗り、北海道を飛び出して本州にもこの車で上陸した
北海道の林道という林道を車体の腹をゴリゴリさせながら進んだ
妻が臨月のときも林道に突撃したり、娘を0歳からアウトドアや観光にも連れ回したせいで、娘は車に乗ると落ち着くのか特に林道に行くとすぐに寝てしまったり
夫婦で不思議な体験をしたり、奇跡的な現象に遭遇したりもした
数え切れない思い出たち
出掛けることが好きだった義父の想いを乗せて、どんどんどんどん走行距離が加算されていく
安全に運んでやるからもっともっと乗ってくれと言わんばかりに
愛車との別れ
これといった不具合はないが車の寿命が近づいていることは、車に関してまったく知識のないワンパクでもわかっていた
だけどこの車は亡き義父から預かっているモノだ
ナンバーも義父と義母の思い入れのあるもの
だからといって、いまさら走行距離が220,000kmにもなる車を返せるか??
返したところで、この車の運命の先に待っているものは変わることがない
ワンパクが本当に引導を渡してもいいのか新車の納車当日まで葛藤していた
この車には義父がまだいるような気がしていたから
義父と義母、そしてワンパク家族の思い出はまだここにあるような気がしていたから
納車当日は業者にてこの車を引き渡し、替わりに新車が納車される手はず
新車を一括購入した喜びなんて1ミリもない
むしろ大切ななにかと引き換えに、500万円以上もする『新車』というオモチャを渡される気分だ
この車にいくらお別れを告げても、ワンパクのなかで踏ん切りがつかなかった
いつしかこの車という『モノ』はワンパクにとってかけがえのないモノになっていたようだ
この車を引き渡すうえで、すべての私物などは車から降ろしていたので、BGMはどこかの局のラジオが流れている
その曲は『Derek and the Dominos』の【Layla】
〝バカみたいに君に惚れ込んだんだ 俺の世界が引っくり返ったんだ″
ワンパクにとってまさにいまそんな気持ちだ
業者に到着し、車内で営業担当者を待つ間『James Blunt』の 【You're Beautiful】が流れた
義父は生前、オールディーズバンドのボーカルとして道内各地でLiveをしていて、顔立ちがJames Brownに似ていることから愛称は『ジェームス』
James違いだが、義父が『もう手離してもいいよ』と言ってくれている、そんな気がした
「粋なはからいをしてくれるじゃねぇか」とエンジンを切り、ドアに手をかけて車を降りる
もう思い残すことはない
全走行距離217,701km
いままで安全に運んでくれて本当にありがとう
そしておつかれさま
Thank you my wish,i love you baby!!
営業担当者から一言
「あれぇ?ETCカードとチャイルドシート降ろすの忘れてますよー」
あ、残ってた(テヘッ☆)