ナチュラルシェルター 冬の森後編【野営】
ゴリラのドラミングを一歳の娘に『違う!ドラミングはグーじゃない!パーだ!』と熱く教えているうちに、図鑑などでゴリラを見つけると指を差して『パパぁ』
…娘がパパのことをゴリラだと認識してしまいました
どうもワンパクですぅ
えーっと、完全に前・中・後編の記事の分量を完全に間違えました
今回は完結編となります
後編は長くなってしまいますが、どうぞお付き合いください
それじゃ、早速いってみよー☆
ナチュラルシェルター 冬の森前編【野営】 - East End Wilder
ナチュラルシェルター 中編【野営】 - East End Wilder
ワンパク1分クッキング
シカのロース肉を半分にしました
貴重なたんぱく質なので半分は明日の朝食にしましょう
ちなみに、ワンパクは枝払いから調理までほとんど全てのことをこのマチェーテで行います
『汚ぇなぁ』と言われそうですが、実際汚いです(笑)
しかも歩き回っていた雪の上で肉を捌いてます
まぁ、でも死体から剥ぎ取ってきた肉なので、元々それほどキレイなものでもないですね
全部モザイクになっちゃうからエゾシカの死体の画像や解体の画像はアップしません
ワンパクの記事でモザイクをかけると、下ネタ画像だと勘違いされそうなので…
『エゾシカの墓場』の近くに死んで間もない死体があり、目玉が喰われていることからおそらくオオワシなどに啄まれ、キツネに内蔵を少し破られたのでしょう
しかし死因となった外傷はなく、疥癬(かいせん)などの病気でもありませんでした
歯の摩耗の様子から、死因は老衰ではないかと判断
この外気温ですから、死んですぐ急速に体温が落ちたため、細菌の繁殖が抑制され、肉は腐蝕せず、食用として良い状態の鹿肉が手に入りました
話は少し外れますが、ここでジビエのニオイのメカニズムを説明しますと、前提として通常動物の筋肉内部は無菌です
狩猟など外的要因の場合、銃弾・ナイフで外傷を受けそこから雑菌が侵入します
死亡直後のエゾシカは体温が40℃ほどあるので、細菌の繁殖は抑えられますが、免疫機能が低下する35℃以下になると細菌は血液を媒介して増殖し、すぐに全身に広がります
この細菌によってスカトール、硫化水素、アンモニアなどの不快臭を発生する臭い肉となります
逆に細菌が繁殖しやすい35~20℃の温度帯を速やかに抜ければ、臭い肉にはなりません
よくジビエの肉の臭みは血抜きが出来ていないからだと言われますが、臭みの原因は細菌感染による腐敗なので、血液が臭いわけではありません
ただ、血液にはブドウ糖がたくさん含まれているため、細菌の適温下である35~20℃では猛スピードで細菌は増殖し、肉が腐敗するので、あくまでも血抜きは細菌の拡散を遅らせるという点で効果的です
臭み対策の根本は冷却であり、血抜きはあくまでも補助的なものとなります
焚き火に肉を直接ぶち込みましょう
たぶんこれが一番おいしく焼ける方法です
あ~、岩塩忘れた
ま、どうってことないっしょ!!
以上で調理完了!!
焼けてるかな?
中はほぼ生のブルーレアですね
非常にワンパク好みの焼き加減です(良い子は絶対に真似しないでね)
エゾシカ肉の生食は非常に美味しいんですが、野生動物の体内には住肉胞子虫、肺吸虫、旋毛虫などの寄生虫やE型肝炎ウイルスなどの細菌が付着している可能性があり、鹿肉の生食は非常にリスクが高い食べ方です
まぁでも、さっきオシッコしたときにワンパクチ○コを触ったままの手の方が、何が付着しているかわからないので、その手で食べている方がリスクが高いです
DIG IN☆
旨いっ!!
あれ?なぜか塩味が効いてるぅ?!
ウソです
凍傷と低体温症
日が落ちるまでに、シェルター・火・食糧・水をなんとか確保できました
全ての作業を日が落ちるまでに終わらせることはサバイバルの基本です
さぁ、夜に備えます
一番に気をつけなければいけないことは、【凍傷】と【低体温症】です
まずは【凍傷】
一日中雪の中を歩き回ったので、ブーツに雪が入り靴下が濡れています
ブーツは寒さで凍っていて、足の指先に少し鈍痛があります
これは一番ダメパターン
凍傷の初期症状です
大したことがないうちに、すぐ乾かしましょう
ん~、クサっ!!
足にまだ感覚があるので大丈夫ですが、一度この鈍痛が出ると、暖めてもすぐには良くはなりません
心臓の鼓動に合わせて痛みが増してきて、そのうち止んできます
ちなみに、以前ワンパクが耳に重度の凍傷を負ったときは、痛みで二日間寝ることができませんでした
凍傷の進行が進むとそれくらい痛みが激しいものになります
そして後日耳の肉が黒く変色してボロボロと取れてきました(マジ話)
ワンパクはまだこの程度で済みましたが、さらにその症状を超えると感覚がなくなり、組織は壊死するので切断するしかなくなります
そして一番怖いのが【低体温症】
これは死に直結します
生存に必要な判断能力も低体温症により低下するため危険です
また、体を濡らすと通常の25~30倍のスピードで体温が奪われていくと言われていますので、冬サバイバルやビバークでは汗をかくことは最大のタブー
…
…
えっと…
汗かきすぎて湯気出ちゃってるぅぅ!!
デ、デブ汗じゃないYO…
あくまでもこれは、シュラフもなく、濡れた体で真冬に野営をするワンパクという漢(おとこ)の闘気だYO…
そう!ワンパクはシュラフを持って来ていません
てか、忘れたわけではありませんよ
シュラフを持っていないんです…
あるのは…
これだけです
ファイヤースターターもランタンも今回は持ってきていません
火熾しの基本【発火方法】 - East End Wilder
『これだけならザック必要ないじゃん』というツッコミもあるでしょうが、ワンパクは【獲物系アウトドアマン】ということを忘れてもらっては困ります!
獲物を捕獲したら持ち帰るためにザックが必要なんです
まぁ、今回は鳥を獲れなかったので結果的に必要なかったですが…
冬の野営の判断ミス
あっという間にすっかり日が落ちて、肉眼ではうっすらと森の輪郭が見えますが、画像では何も写ってないですね
あれ?
やべぇ…
どうしよう…
マイナス14℃
別に大したことないはずなのに…
寒ぅい…
【その場の状況と経験から『なにが最優先』かを導き出して、形にしていく即応力が試されます
今回は短期滞在を予定しているので、そこまでしっかりとしたシェルターまでは必要ないとワンパクゴリラは判断しました
この判断を見誤ると大変なことになります】
※中編より引用
Nooooo!!
完全に判断を見誤っちゃったYO!!
汗でいっぱい濡れた体に、雑に仕上げたナチュラルシェルターが追い打ちをかけてきます
帰還する?
いや、暗闇の中この森を歩きまわることは自殺行為です
マジで遭難します
シェルターを補強する?
暗闇の中、刃物などを使う作業は絶対にやってはいけないタブー
状況は悪い方向にしか行きません
ワンパクに残された選択肢はただ一つ
寝ないで朝を迎えること
自分ルールで今回タープは使いませんが、最悪の場合は非常用シェルターとして使用することにします
まぁ、実はワンパクは結構このパターンがあるんです
『ブッシュパネルだけでなく、ちゃんとシェルター作れば良かったなぁ』『【チムニードラフト】(焚き火熱利用の床暖房機能)作れば良かったなぁ』と何度思ったことか
なのにワンパクはいつも食糧確保を優先させてしまいます
朝が来た
当然、寒さで一睡もできませんでした
てか、夜に雪降ったぁ
すぐに体温を上げるため、温かい食事をとりましょう!
このパウダースノーがあれば、水に困ることもありません
鍋に雪を掬います
昨日の鹿肉(凍ってしまった)と、香り付けのエゾマツの葉を一緒に鍋に入れて火にかけます
エゾシカ肉のスープの完成です
手袋は濡れて凍ってしまい、昨晩からは素手だったので湯気で手を温めます
手のアカギレやカサカサになった唇には、スープに浮いた鹿肉の脂を塗ります
冬の長期野営ではよくやるルーティーンです
ほぼ生の鹿肉を千切りながら食べます
うほぉ~!うめぇ~!!
あったけぇ~!!
この森に住む他の動物たちのご馳走になるはずだった鹿肉を、少しだけ分けてもらったことに感謝です
そして、いままで生き抜いてきたこのエゾシカの命に感謝!
この野営の目的
忘れていたわけではありませんよ
やはり、目視できたエゾシカの個体数は少なく、足跡もだいぶ少ないのは確かです
今年は暖冬の影響で各地で雪が少ないこともあり、わざわざ道東のこの地域まで来ずとも簡単にエサにありつくことができているからなのかもしれません
この個体数の減少が、巨大地震の前兆による影響でないことを祈り、この森をあとにします
このあと、ワンパクがとんでもない下痢に襲われることになるとは、このときまだ知るよしもない